マンションにも気持ちいい風が入るくらいだ、空はもっと風が強いらしい。

様々な形をした白い雲が目に見えるほど早い動きを見せていた。

ただ言葉なく見惚れてしまった。



まるで、あの雲を掴むような恋だった。



ただ好きになって見つめていた、それだけで幸せだった。

彼を想い、嬉しくなったり切なくなったり、そんな生活で私は満たされていた。

やがて目が合って、話をする機会が増えて。

傷付くのは分かっていたけど止められなかった。

どうして人は欲張りなのだろう。見ているだけじゃ駄目、いまここに、いま目の前にいるのに。

だからこそ彼の心が欲しいと思ってしまった。

手を伸ばして触れられるのが体だけじゃなくて、心も触れられたらいいのに。

愛しさが溢れた分、切なさが心に染み込んだ。