それからしばらくして、淕は運ばれていってしまった。

潮は、淕のお母さんに連れられて廊下に出た。

『これ、淕があなたにって』

黄色い、イチョウのような形をした折り紙。

自分で切って作ったのか、形が不思議だった。

そして、力が入らない手でこう書かれていた。




“この世界で俺に出会ってくれてありがとう。大好きだったよ”



淕は知っていたのかもしれない。

昨日が潮に会う、最後になることを。


『あの子、毎日のようにあなたの事、楽しそうに話してた。仲良くしてくれて、ありがとう』











神様は意地悪だ。
せめて潮が病室に着くまで。
一瞬でいい。
一瞬の命でさえも、淕にあたえてくれなかった。


今、願っても仕方がないけど…


一瞬だけ、
“昨日はごめんね”
と謝る時間だけ。

淕に、命をくださいー。