一瞬だけ、命をください

『淕!』

物凄い勢いで病室の扉を開ける。

中には、淕のお父さんとお母さん。
そして、弟がいた。

『淕…?』

息を切らしながら、ヨロヨロとベッドまで歩く。
ベッドには、瞳を閉じた淕がいた。


何かいい夢でも見ているかのように、少し笑った口をした淕の寝顔。

起きてもおかしくないくらい、気持ち良さそうだった。

『嘘でしょ…ねぇ…嘘だって言ってよ…』

疲れはてた潮の足は、淕のベッドの前で崩れた。

『淕…嫌だよ…私、淕にオーストラリアの事話してないよ!それに、まだ並木道歩いてないじゃない!約束破るの!…淕!』

潮の目から涙が流れる。布団を強く握りしめる。
病室には、潮の泣き声だけが響いていた。