一瞬だけ、命をください

『今日ね、オーストラリアの語学研修の班決めをしたの!千早と同じ班になったんだよ』

暗い空気を明るくする。
そんな無理矢理な話題。
『良かったじゃん』

『でも、行くのやめようかなって』

『何で?』

『だって…陸、行けないかも知れないのに』
潮がうつむく。

『行ってこいよ。コアラ見るの楽しみにしてただろ』
潮はコアラを楽しみにしていた。1年ほど前から、早くオーストラリアに行きたいと言っていた。
『でも…』

『いいから。俺のせいで潮が行けないなんて、気分的にこっちも良くないし』

さっきまでの暗い顔をなかったことにするように顔をあげ、潮が微笑んだ。

『ありがとう』

カーテンの隙間から光が差し込む。

まるで二人を包み込むように。