先輩と音楽室*短編


歌が一段落したとき、あたしは勇気を出して話しかけた。


「先輩」


先輩が振り向く。


「あの、えっと、

どうしたらそんな声が出るんですか」


「え…」


先輩は困った風に言葉に詰まる。


確かに、
そんな質問を知らない人からいきなりされたらびっくりするだろう。


「あたし、コーラス部の部長なんですけど…

全然…うまくないんです。

そういう風に、歌いたいです。」




自虐的なことを言ったものだ、と思う。


恥ずかしいな。
ほんとに。