部活が終わり、ふと音楽室に目をやると、
やっぱり桜木はいなかった。
「帰っちゃったな」
そう言って、またふにゃっとした顔をした篤志。
「だから、その顔やめろって」
ふっと笑いながら、篤志と帰りの準備をした。
そして、バッグを肩にかけて、
グラウンドから、ロータリーへ続く階段を登りきったら、
女子3人がロータリーから近づいてきた。
「成海くん、ちょっと・・」
真ん中の女子がそう言ってきた。
「あ・・俺、校門で待ってるな」
篤志が片手を軽く振って、校門へと歩いていってしまった。
ぞくぞくと、部員たちが階段を登ってきて、
「あっ、成海先輩…失礼します!」
と、挨拶をして通り過ぎていった。
じろじろとこの光景を見られて、俺はすごく嫌だった。
気づくと、ひとりの女子だけ俺の前にいて、
他の二人は、離れたところから見ていた。
「何?」
目の前の女子が
「一緒に帰らない?」
そんなことを言ってきた。
は?ていうか、誰?
「あ・・・ごめん。友達待たせているから」
「ずっと待っていたんだけど」
「・・ごめん。友達と帰るからさ。
悪いけど。じゃあ・・」
俺は、帰ろうとしたら、「待って」と、
また、俺の前に立った。
「好きなんだけど」



