「ピアノ…」
俺は校舎を見上げた。
すると、2階の音楽室で、
桜木がピアノを弾いていた。
「合唱の曲じゃなさそうだな」
篤志も見上げてそう言った。
「うん」
…ていうか
「お、お前は見るな。
ほら、ダッシュ行くぞ」
俺は篤志の腕を掴んで、スタートラインへ引っ張った。
「成海のヤキモチやき〜」
「うるせぇ−」
からかう篤志をぐいぐい引っ張った。
そしてスタートラインの脇に篤志と並んで、ダッシュの順番を待った。
「成海、見てるって」
篤志が肘で脇腹を突いてきた。
「何がだよ」
「桜木が」
はっとして俺はまた音楽室を見た。
すると、
ピアノの音は止まっていて、
桜木が椅子に座ったまま、
グラウンドの方を
眺めていた。



