合唱の練習が始まってから、
休み時間、桜木を見ると、
時々目が合うようになった。
でも、桜木はすぐに目をそらす。
俺と桜木は、指揮者と伴奏者の関係以上にはなれなかった。
桜木に近づきたかったのに、
結局、何も進展がないまま、
あっという間に合唱コンクール本番が終わった。
指揮者になれば、
少しは桜木と気軽に話しができるような関係になれるかと思っていたけど、
どうやらそんな事を願っていたのは、
俺だけのようだった。
「思い切って告白とか」
合唱コンクールも終わり、
その日の放課後の部活中、
隣でストレッチしていた篤志がふいにそんな事を言ってきた。
俺は、前屈しながら固まった。
「ま、成海がこのままでいいなら、
別にいいんじゃん?」
俺は上半身を起こした。
「いいわけ…ないだろ…」
そうボソッと言った時、
校舎からピアノの音が聞こえてきた。



