「そうだ。優。
抱っこしようか」
そう言って俺が立ち上がると、
だんばー!!だんばー!!と言って、
優がぴょんぴょんジャンプして喜んだ。
優は、ばんざいを「だんばー」と言う。
俺は優を抱っこした。
そしてぐるぐるぐるっとゆっくりだけど、
回してあげた。
「あああ~~~!!」
回されて、優はご機嫌だった。
そんな姿を見て、
母さんが、笑った。
大丈夫だ。
大丈夫だよ。優。
お兄ちゃんがいるから。
お兄ちゃん、一生懸命勉強して、
K高校に入って、
優が手術した病院の大学に入って、
耳鼻科医になるから。
そして、難聴の研究をして、
優が、少しでも生活しやすくなるように、
お兄ちゃん、頑張るから。
だから、いじめとか、偏見に負けるな。
負けるな、優…
「おいいたーん!おおっとー(もっと)!!」
気づくと俺は、優をぎゅっと抱きしめていた。
さっき、母さんに
泣いちゃダメだと自分で言っておきながら、
泣きそうになっている自分が、
情けなかった。



