「え・・・・・」 桜木はそれだけ言って、小さな顔を真っ赤にして、 大きな瞳で、俺を見上げてきた。 かわいいとか、そんなんじゃなくて、 綺麗な子だと、純粋にそう思った。 「俺、指揮者なんだ。よろしく」 あんまりにも、桜木が真っ赤になって固まっていたから、 思わずふっと笑ってしまった。 「じゃ・・」 そう言って、桜木を残して音楽室を出た。 廊下を歩いていて、気づいた。 自分の心臓が、すげー勢いで動いていたことに 自分の手が、汗でびっしょりだったことに………