「ねぇ先生…お腹の赤ちゃん…産むの?」

涙が、ピタリとやんだ。どうしてそらが、そのことを知っているの?

「…空には、関係ない」

「関係大ありじゃん!!…オレの子供だろ?」

「空の子じゃない。・・・私の子だよ」

空の手を振り払って、私は病室を出て行った。

空は、その場から、動けなかった。

次の日、私は空がいない間に、看護婦さんに手紙を預けて、病院を後にした。

空が、病室に来たときは、もう、私の姿はなかった。空は、ベッドを見つめていた。


「・・・あの、今朝大島さんから、手紙を預かってまして、これを、あなたにって・・・」

「あ、すみません・・・大島さんは?」

「手紙を渡してすぐに、退院されましたけど・・・」

「そうですか・・・ありがとう」

空は一人になって、私からの手紙を開いた。

『空へ
助けてくれたのに、お礼も言えなくて…

ケガまでさせたのに、黙っていくことを許してください。

赤ちゃんのこと、前田先生から聞いたんでしょ?

確かに、この子は空の子。

…でも、この子は、私が一人で、育てます。

私は、他の人を苦しめてまで、空と幸せにはなれないから。

この子がいれば、私は生きていけます。

でも、空は、私とは違う人と、幸せになって… 美樹』

空の目から、涙が溢れ出す。

「なんで、全部一人で決めんだよ…なぁ、先生…」