「卒業おめでとう」

「あ・・・前田先生…先生こそ、結婚おめでと」

「エッ?結婚て、なんのことだよ」

「えっ、だって、大島先生と結婚すんだろ?!大島先生が言ってた」

「・・・そんなこと、あるわけないだろ」

空は、頭の中が真っ白になった。結婚するっていうから、先生から離れたのに…

前田先生は、空を見て、ため息をついた。

「その様子だと、あのことは、全然知らないんだろうな」

「あのこと??」

「本当は言いたくないけど…美樹とお腹の子を幸せにできるのは、お前だけだから」

「お腹の…子?」

「あぁ、お前の子供だよ。今日、卒業式なのに、美樹来てなかっただろ?!・・・お前には何も言わずに、遠くに行くつもりみたいだぞ」

空は走り出した。

今、離れてしまえば、二度と会えないと思ったから。

汗だくになりながら、マンションに着いた。

でも…もう部屋にはいなかった。

今度は、駅に向かって走り出した。

駅の前の信号に引っかかった空は、足を止めた。

見つめた先に、先生がいた。

・・・先生の前にはミヤコが立っていて、何やら言い争いをしている。

空は、信号が変わると同時に、二人に向かって走り出した。

ミヤコが先生を突き飛ばして、道路に飛び出した。

そこへ車が走ってきた。

空は急いで先生を押して、歩道に倒したが…

気が付いたら、病院の、ベッドの上だった。

「目が覚めました?」

「・・・はい。あの、高校生くらいの男の子がここに運ばれませんでしたか?」

「いいえ。あなたが救急車で運ばれたときに、一緒に来た男の子ならいますけど」

病室のドアが開いて、空が入ってきた。

「先生、大丈夫?」

空の腕には、包帯が巻かれていたけど、大したことはなさそうだ。

私はホッとして、泣き出してしまった。

「先生・・・また泣いてる…」

空は、私の頭を撫でた。

「だって、空が…」

泣き続ける私を、空はずっと抱きしめ続けた。