「気分は、どう?」

アッ君は優しい笑顔で囁いた。

「うん、大丈夫。…ゴメンね、ビックリしたでしょ」

アッ君は首を振って、私の頭を撫でた。

「さっき・・・先生が、検査結果を言いに来たよ」

「なんて、言ってた?」

アッ君は俯いたまま、何も言わない。

「何か、悪い病気だった?」

「ち、違うよ。・・・妊娠、してるって」

「エッ・・・」

私は言葉に詰まった。

・・・アッ君とは、長いこと、そういうことがなかったから。

「オレが、お腹の子の父親なわけないのに…先生も早とちりだ」

長い沈黙が続いた。

「いつ帰っても、大丈夫だって言ってたから、美樹が大丈夫そうなら、送っていくよ」

そう言って、家まで送ってくれた。

「うん・・・ゴメンね」

「いいよ。俺たち『恋人』だろ・・・美樹、あのさ」

「ん?」

「…いや、また今度にするよ」

アッ君は、言いたいことを呑みこんで、帰って行った。

私はソファーに座って、自分のお腹を見つめた。

私のお腹の中に、空の赤ちゃんがいるなんて…

たった一度、最初で最後だと思って、空を受け入れた。

・・・アッ君とは、別れるつもりでいたけど、空との体の関係はバレないで終わらせるつもりだったのに・・・

月日は流れ、3月。

空たち3年生が卒業に日を迎えていた。

「空、卒業おめでとう」

「ミヤコ。お前こそ、おめでとう」

「私さ…ずっと、空のことが好きだったんだ」

「エッ、マジで?!…ごめん、オレ、好きな人がいるから…」

「…そっか…ゴメンね。今の忘れて。…あー!!言ったら、スッキリした」

「ゴメン・・ミヤコ」

「もう、謝らないでよ。惨めになるじゃん!もう行くね。」

ミヤコがいなくなってすぐ、前田先生が空のところにやってきた。