「どうしたんだ空。こんなところで大島先生と…」

空は咄嗟にウソをついた。

「あー、近くでばったり会って、女一人も危ないと思って、送ってきた。ね、先生」

「エッ…あ、うん。そうなの」

「ふーん、そうなんだ。空も優しいところあるんだな」

「当たり前じゃん!…じゃあね、大島先生…前田も、彼女をほっといたらダメだよ」

そう言って、その場を立ち去った。


~空~

先生たちが見えないところまで来ると、オレは壁にもたれてため息をついた。

…何やってんだか。あそこで、先生のこと奪ってしまえばよかった。

そしたら、先生は、オレのだったかもしれなかったのに…

私は空が見えなくなると、アッ君の方を見た。

「どうしたの?さっき、電話では家に来るなんて言ってなかったのに…」

アッ君は黙ったまま、私を抱き寄せた。

「・・・声聞いたら、会いたくなったから」

その言葉に、素直に喜べない自分がいた。

…でも、なんとか作り笑いをすると、アッ君の胸に顔を隠した。

 アッ君は、顔を見に来ただけと言って、帰って行った。

私は部屋に入るなり、力なくソファーに寝そべった。

・・・何やってるんだろう。

・・・アッ君が好きなはずなのに、空への気持ちが止まらない。

私は、空から貰ったストラップを握りしめたまま、いつの間にか、眠っていた。