重い足取りでマンションまで帰ってくると、ドアのところでうろうろしている男の子が目に映った。

・・・空だ。

私は急いでエレベーターの方に向かったけど、私に気付いた空に、腕を掴まれた。

「先生!」

私はまともに、空の顔が見られなかった。

空は無言のまま、私の手を引っ張って、エレベーターに乗せた。

「ちょ、ちょっと、どこ行くの?!」

「…先生と、デート」

そう言って、ニッコリ笑った。

私は何度も手を放そうとしたけど、空か放してくれなかった。

私は何とか空を引き留めて、ため息をした。

「空…どこでも行くから、少し、手の力を緩めてくれない?」

「あ・・・ごめん」

空は慌てて力を緩めると、私の赤くなった手を、優しく撫でた。

私はなんだか可笑しくなって、クスクスと笑いだした。

「な、何笑ってんだよ」

「だって、強引なんだか優しいんだか、わからないから」

真っ赤な顔をした空は、そっぽを向いて、私の手を引っ張り歩き出した。

「ところで、どこ行くの?」

「あー、まだ言ってなかったね。・・・遊園地。」

「遊園地?」

「うん。あそこの観覧車から見る夜景が、凄くきれいだから、先生に見せたくて」

「…でも、まだ明るいよ」

「暗くなるまで、いっぱい遊ぼ!」

空は、ニッコリ笑った。

私もその笑顔につられて笑った。

「先生、次あれ乗ろう!」

「エー、まだ乗るの?もう疲れちゃった。少し休もう」

私はベンチに座って、ため息をついた。

「ごめんね先生、少し休もう。…オレ、何か買ってくるよ」

そう言って、売店の方に歩き出した。

辺りはもう暗くなっていた。

私は、座ったまま、夜空を見上げた。

「わぁ、キレイ…」

無数の星が輝いていた。

・・・そういえば、こんなにゆっくり星空見るの久しぶりだな。

物思いにふけていると、空が帰ってきた。