『もしそれが卵だったら』


殻の中に満たされた粘液が
もし神に祝福されたなら
それは殻を破って羽ばたくために
出現するのだろうこの世界に

だがこの卵は単なる特別な日々の糧
命は宿らない
単なる美味な食物

そうさ
案外真剣に食べるんだぜ
ピリッとする異国のスパイスと
ほんの少しの塩
いつも躊躇する
殻にひびを入れる瞬間
俺の取り分はほんの少しだから
多少の空虚感という皿の上で

その皿は俺にとって新しいデザインだ
切なさが彩られ
諦めというエンボスが施されている
それがとても美味しく見せるなんて
昔の俺なら想像もつかないだろうな