『時空というマボロシ』


君を感じている
悲しみで
胸が潰れているのがわかる
胸腺を覆う硝子の板と
背中に張りついた
金属のような背筋を感じる
ほとんど
息をしていないことを知る
喉に涙が詰まって
舌が痺れているのを感じる
奥歯を噛み締めて
それを耐えているのがわかる


君が真に幸福な時を感じる
背中が伸び左右に広がり
思惟は静けさに変わり
首を心持ちかしげた形は
かの弥勒のようなたおやかさで
そこに在る
その君はもはや輪郭は溶け
僕は君と自分との
見分けがつかない
その時空のマボロシを超えた時
そこにはただ
愛しか見当たらないことを知る
君が垣間見る世界の美しさを
すべてその内に秘めて