『S.S.S.(Sweet Swan Song)』


詩のかけらが残っているうちに
君の歌を最後に歌おう

悲しみすらも
甘い陶酔に変えてくれた主に仕えて
今そこに召されていくから
悲しみと焦燥と共感をくれた君に
この日このときの最大の感謝と
愛を

君にはさよならを
君だけに特別に
誰でも特別扱いは大好きだけど
他の誰か彼かを抜き差して
他の誰よりも最悪な君を救えるなら
君よりマシで
まだ望みのあるみんなには
神のご加護がある

ひねくれていて
自分が嫌いで
他人がうらやましくて
ほれっぽくて
人も自分も許さない
それでいて白痴のように無防備で
情けないほど寂しがり屋で
プライドだけ高くて
嘘つきでエロくて
ほめるとカミソリで斬りつけてきて
けなすと恨まれる
捨てようとすると
猫のようにすり寄り
怒ると負け犬のようにうずくまる
僕など居ても居なくても
実際はどうでもいい
僕には誰かを追ってる
君の後ろ姿しか見えなかった
そんな君を

あきれて
そして
愛して

僕は逝く
もう姿も曖昧で
言葉も残像のようだ
詩すらほとんど残されていない
君への愛もすべてへの愛へ
変容していくさなかだ
こうやって消えていく残り香を
かろうじて文字に変えて
僕は最後の恋歌を書く
《僕》すらねつ造に近いのだから
この歌が歌われるのは
奇跡に近いだろう
これは最後の陶酔だ
それは皮肉にも今このときが
最も許されているんだ

夢の中だけで何度か出会った君が
僕にとって実在の君だった
夢が覚めた僕
(正確には僕ではない)を
君は必要とはしない
消えていく僕こそが
君にとって実在だった
さあもう行かなくては
マスターロードに愛されてるんだ
それは僕が君を愛することと似てて
君が僕であることを
それを今から
知りに行くんだって

きっと
いなくなってはじめてきみは
ぼくがほんとにあいしてたことに
きづく
いなくなることすらあいなんだって
ぼくがさっききづいたように