諏訪家は鬼の一族だ。

しかし、私は元々
諏訪家の者ではないから
当然、鬼ではない。


だか、私は
家来の血を飲んでいる。


そうすることで
周りには
私が鬼の様に見せている。


そんなことに
何の意味も無いが…







別に血を飲むことに
抵抗がなかった。

最初からあまり
不味いとも思わなかった。


血で相手の感情を
読み取ることが出来た。



英は尊敬の念や
頼られている喜びを感じた。


暁は…


一度だけ

暁の血は
私への狂おしいほどの
愛情だった。


とても心地よかったが
恐ろしくもあった。

溺れてしまいそうで…


私は暁を愛していた。

暁の血を飲み
暁の気持ちを知って
嬉しかったが



心は満たされなかった。







私の心は
あの日から欠けていた。


主を失ったあの日から…






ある日、いつものように
英の血を飲んでいた。


小刀で英の腕を切り
溢れる血を貪っていた。


「み、美月様…
僕の血は、どうですか。」

息が上がっている英は
とても色っぽかった。


『とても美味しいよ。』


「そ、それは…
よかったです、美月様。」

そう言うと
英は気を失い倒れた。


『英!大丈夫か、英!?』


「だ、大丈夫です。
少し貧血なだけですから。」

『すまない、英。』

私は気付かぬ間に
沢山の血を貪っていた。

布団を敷き英を寝かせた。


私はふと、血に濡れた英を
見て美しいと思った。

『まずいな、これは。』


そんなことを言いつつ、
一度思ってしまったら
止まらない。


もっと、もっと
血まみれになったら
美しいだろうか?


そんなことを考えていた。


『止まれ、止まれ!』

考えるのを
止めようとするけれど
止まらない…


美月は
自分の腰に下げている刀に
手をかけた。