「乗り。」


青年は自転車の荷台を指差す。
躊躇っている私の腕を引っ張り荷台に乗せようとする。



渋々、といった感じで荷台に乗った私を見て、こぎ始めた。が、すぐに止まり…



「こら。もっとちゃんと掴まり!」


私の腕を自分のお腹に巻き付ける。別に落ちないと思うけど、青年のぬくもりが温かくて、ちょっとだけ強く力を込める。



「俺、独り暮らしやけど……ええ?」

「……何が?」

「…………君、彼氏とかおった?」

「………失礼だよ。」



失礼だなっ!と思ったけど、何故か心から怒れなかった。
けど、


「………スマンスマンッ!!!ちょお、………やめっ………」



こしょばしてみた。
青年の温かい声が私の耳を擽る。何でか、青年だけには微笑えた。心が温かくなった。



「………いたよ、」

「え゛…………」

「あなたが聞いたんじゃない。何で驚くのよ」

「………や、ちょっとな。」



荷台に乗っているから青年の顔が見えないけど、真っ正面から向き合っていたら確実に顔を逸らしてただろう。