いん とれいん。



***


数年後___


ある日の会社帰り俺は小さな書店に立ち寄った。
港の写真集を探すため。



あれから何年かがたち、もう無理なのかと思ったがいまでも続いている日常だ。



いつもの通り、写真集のコーナーで名前を探す。
けれど、いつもの通り見つからず諦めてふと俯いたとき、いつの時か港と行った海の写真が表紙にあった。



ふと、手に取りパラパラとめくってみる。
何気ない日常の写真だが、どこか心惹かれるものがある。



「あ、すいませーん!それって“みなと”の写真集ですよね?」


ふと気づけば隣に女子高生がいて、俺の見ている写真集を指さしていた。
ン…、と思いつつ背表紙を彼女に向けると嬉しそうに笑い、


「すみません、それと同じものを取ってもらってもいいですか?」


彼女にその写真集を渡すと、微笑んでありがとうございます。といい会計にいった。




「……港、ちゃうかな。」


ぽつり、と呟いた言葉に雑音にかき消された。
ふと、最後のページを見て目を見張った。



『夜の色を持つ貴方に 笹倉港より』


そこには、出会ったとき彼女がシャッターを切っていたあの星空が映っていた。



俺は、笑みを浮かべてそれを会計に持っていった。