「……港…。」
ショウが追いかけてきて。ただ、目の前を見ていた私の腕を取った。
「港、行こう。港のお母さんが港を怨むはずがない。だから、いこう。」
「…ッ…………ん。」
私の腕をひいてさっき走ってきた路をゆっくりと歩く。
波の音が電車と同じ規則的なリズムを響かせている。
ギュッと“一眼レフ”を抱きしめる。
潮風があたしの髪を撫でた。
優しい春の日差しと共に、
懐かしい潮の香りを漂わせて。
「……お母さん」
サク、サク、と砂浜を一歩一歩踏みしめて歩く。波打ち際へと。
「……ごめんね。」
いつの間にか握られていた腕が離されていた。
「ホントは、大好きだったの。写真を取ることが。」
目に映した映像を少しでも長く残しておきたくて、カメラを手に取ったの。
お母さんやお父さんのように、なりたいと思って。
でも、予想以上にプレッシャーだった。
2人を乗り越えるというコトは。
何度も、何度も賞をとるうちに周りからの期待が溢れていく。
__当たり前、才能だから。
私、という作品につけられたカチはだんだんと低くなっていった。


