誠の道ーキミと共にー

「…心なんて、私は持っていない」



静かな部屋に璃桜の声だけが聞こえた。




「感情なんて、邪魔なものだ。

 
 怒りも、喜びも、悲しみも、何もかも…。


 私には邪魔なだけだ。だから----」




「それでも君は人間だよ」



途切れた璃桜の次に聞こえたのは近藤の声だった。


いや、正確には近藤が璃桜の言葉を遮った、と言うほうが正しい。




「君の母親が罪を犯した神であっても、私たちと同じように息を吸い、会話をし、生きている。どこか、間違いでもあるかい?」



近藤はにっこりと璃桜に笑顔を向けた。




「みんな、平等に生きてる。
 大丈夫、君は決して一人じゃない」




その笑顔は、言葉は、気持ちは、璃桜の凍りついた心を溶かし始めるのに十分だった。



「…」



璃桜は静かに、瞼を閉じた。



真っ暗な中で聞こえたのは、土方の声だった。




「長州の間者でなければ、悪いようにはしない」


「ははっ、トシってば本当に不器用だねえ」


「うるさい…」