誠の道ーキミと共にー

「ほら。」


私の様子に気づいて、沖田さんが持ってきたばかりの桶と空になった桶を交換してくれた。


「あ、すみません、ありがとうございます」


ぺこりと頭を下げて桶を受けとる。

沖田さんはふわりと私の頭を撫でて「こっちの桶は持っていくからな」と、空になった桶を持って部屋を出た。



すっ、と襖がしまる音で沖田さんが部屋を出たことを知る。

その瞬間、一気に顔に熱が集まる。


・・・あんな優しい沖田さん、初めて見た。


小動物のような仔犬の時ならいざ知らず、まさか狼であんなに優しいなんて。


・・・明日は槍でも降るんじゃなかろうか。


そう考えながら、手で顔をぱたぱたと扇ぐ。


火照った熱を冷まそうと、冷えひえの桶に手を突っ込んだ。


ばしゃばしゃと遊んでいると、ぽちゃん、と何かが落ちる音がした。



「あ、このガラス瓶・・・」


どうやら見覚えのないガラス瓶が落ちたようだ。


「・・・そういえば、アブリエルがなんか言ってたような?」



『あぁ、そうだ。懐に良いものが入っていますから。』



水桶の中からガラス瓶を取りだし、目の前に掲げてみる。



「・・・良いもの?」



中にある桃色の液体はさらりとガラス瓶の中を舞った。