その頃アブリエルは元居た位置から離れ、林のところに身をかくしていた。
木の幹に体を預けながらずるずると座り込む。
はぁっ、はぁっ・・・・・・
いまだ出血の止まらない右腕を押さえたまま、天を仰いだ。
コドルファー・・・
貴様だったのか、真の咎人は・・・
今は行方不明の自分の兄。
もう兄とは思ってはいない、自分と瓜二つの顔を持つ肉親を思う。
「はぁっ・・・」
あまりここに長居するのは良くない。
飛龍(ひりゅう)も無事に勝ったようだし、早々に引き上げなければ。
木の幹伝いに立ち上がる。
カチャリ
後ろから物騒な硬質な音が聞こえた。
すぐ真後ろから。
「・・・」
「ここまで京の町を混乱に招いたのだ。大人しく縄についてもらおうか。」
「・・・拒否した場合は?」
「貴様を容赦なく斬り捨てる。」
「ご冗談を。貴方様はそこから私に向けて剣を近づけることは出来ませんよ。」
クルリと振り向いて自分の後頭部に向けられた剣の切っ先に指を添える。
「なっ・・・?!」
驚きに目を見開く男。
「ふっ」
添えた指先に息を吹きかけると、男の体が浮いてドンッと後ろにあった木の幹にぶつかった。
「うっ・・・」
「おや、まだ意識がありましたか。さすがは壬生の狼。その気質に免じて今日のところはここまでにしておきましょう。」
「ま、待てッ・・・」
去っていく後ろ姿に手を伸ばすがその手が届くことはなく、だらん、と地に落ちた。
斎藤side
カサッ・・・
誰かがこのはを踏む音が聞こえた。
そして息を呑む気配。
「は、一くん?!」
「平助か・・・」
やってきた気配に目を開ける。
「ちょ、大丈夫?!何があったの?!」
目の前の男---8番隊隊長、藤堂平助は焦ったように俺の目の前に跪いた。
「問題ない・・・少し油断した。」
「ちょ、それ少しくらいじゃないよ!!」
「いや、ほんとにほんの一瞬だった・・・」
「ッ・・・まさか・・・」
「あぁ・・・相当の手練れのようだ。」
その言葉に平助は顔を歪めた。
「・・・じゃあ、土方さんの憶測が当たっちゃったんだね・・・」
「・・・」
総司が飛び出して、そのあとを新八たちが追った後。
副長は俺たちにも出動命令をだした。
だがそれは、新八たちとは少し違った内容だった。
---------------
『総司は新八たちに任せれば大丈夫だ。問題は他にある。』
そこで副長の目が鋭く光った。
『大勢の浪士に襲われたのはおかしい。加賀美は病気療養とし、隊士たちにはそう混乱は起こってないはずだ。なのに、何故、今、加賀美が一人だと分かったんだ?』
『ちょうど一人で歩いていた離桜を見つけたからじゃん?』
『それこそおかしい。一気にたくさんの浪士を集められたとしてもそれは前から計画を練っていたからのはず。一番隊隊長の右腕として、今では浪士たちの間にも加賀美の名は知れ渡っている。仮に平助の言った通りだとしても、それだったら』
『・・・近頃、浪士たちが集まってなにやら計画を練っていた、と言うことですか。』
『あぁ。そしてその決行当日、または準備段階で加賀美が一人のところを発見。算段には無かったがやるとしたら今だと、加賀美を襲った可能性がある。』
ハッと回りが息を呑む。
『・・・うん。ちょっと長州の動きに注意したほうが良いかもしれないね。』
『あぁ。だから、もしものことを考えて斎藤たちは京の町へ行ってくれ。動いているのが長州じゃない可能性もある。とは言え、何かが起ころうとしているのは事実だ。・・・頼んだぞ。』
『はっ。』
『了解っ』
---------------
木の幹に体を預けながらずるずると座り込む。
はぁっ、はぁっ・・・・・・
いまだ出血の止まらない右腕を押さえたまま、天を仰いだ。
コドルファー・・・
貴様だったのか、真の咎人は・・・
今は行方不明の自分の兄。
もう兄とは思ってはいない、自分と瓜二つの顔を持つ肉親を思う。
「はぁっ・・・」
あまりここに長居するのは良くない。
飛龍(ひりゅう)も無事に勝ったようだし、早々に引き上げなければ。
木の幹伝いに立ち上がる。
カチャリ
後ろから物騒な硬質な音が聞こえた。
すぐ真後ろから。
「・・・」
「ここまで京の町を混乱に招いたのだ。大人しく縄についてもらおうか。」
「・・・拒否した場合は?」
「貴様を容赦なく斬り捨てる。」
「ご冗談を。貴方様はそこから私に向けて剣を近づけることは出来ませんよ。」
クルリと振り向いて自分の後頭部に向けられた剣の切っ先に指を添える。
「なっ・・・?!」
驚きに目を見開く男。
「ふっ」
添えた指先に息を吹きかけると、男の体が浮いてドンッと後ろにあった木の幹にぶつかった。
「うっ・・・」
「おや、まだ意識がありましたか。さすがは壬生の狼。その気質に免じて今日のところはここまでにしておきましょう。」
「ま、待てッ・・・」
去っていく後ろ姿に手を伸ばすがその手が届くことはなく、だらん、と地に落ちた。
斎藤side
カサッ・・・
誰かがこのはを踏む音が聞こえた。
そして息を呑む気配。
「は、一くん?!」
「平助か・・・」
やってきた気配に目を開ける。
「ちょ、大丈夫?!何があったの?!」
目の前の男---8番隊隊長、藤堂平助は焦ったように俺の目の前に跪いた。
「問題ない・・・少し油断した。」
「ちょ、それ少しくらいじゃないよ!!」
「いや、ほんとにほんの一瞬だった・・・」
「ッ・・・まさか・・・」
「あぁ・・・相当の手練れのようだ。」
その言葉に平助は顔を歪めた。
「・・・じゃあ、土方さんの憶測が当たっちゃったんだね・・・」
「・・・」
総司が飛び出して、そのあとを新八たちが追った後。
副長は俺たちにも出動命令をだした。
だがそれは、新八たちとは少し違った内容だった。
---------------
『総司は新八たちに任せれば大丈夫だ。問題は他にある。』
そこで副長の目が鋭く光った。
『大勢の浪士に襲われたのはおかしい。加賀美は病気療養とし、隊士たちにはそう混乱は起こってないはずだ。なのに、何故、今、加賀美が一人だと分かったんだ?』
『ちょうど一人で歩いていた離桜を見つけたからじゃん?』
『それこそおかしい。一気にたくさんの浪士を集められたとしてもそれは前から計画を練っていたからのはず。一番隊隊長の右腕として、今では浪士たちの間にも加賀美の名は知れ渡っている。仮に平助の言った通りだとしても、それだったら』
『・・・近頃、浪士たちが集まってなにやら計画を練っていた、と言うことですか。』
『あぁ。そしてその決行当日、または準備段階で加賀美が一人のところを発見。算段には無かったがやるとしたら今だと、加賀美を襲った可能性がある。』
ハッと回りが息を呑む。
『・・・うん。ちょっと長州の動きに注意したほうが良いかもしれないね。』
『あぁ。だから、もしものことを考えて斎藤たちは京の町へ行ってくれ。動いているのが長州じゃない可能性もある。とは言え、何かが起ころうとしているのは事実だ。・・・頼んだぞ。』
『はっ。』
『了解っ』
---------------


