誠の道ーキミと共にー

私が撥をもって、三味線を弾く。



それに合わせて、女郎が舞う。



「「「ほぅ・・・」」」



周りの男どもから感嘆の息が漏れた。


切れのある、けれど艶やかや舞。
それと一緒に聞こえてくるメリハリのはっきりした澄みきった音。


なにもかもが、さっきとは別物だった。



「芹沢はん、いかがどすか?」



上座で見ていた芹沢さんに明里さんが声をかけた


芹沢は無言で徳利を持ち上げる。


明里さんはそれにお酒を注ぐ。


そして、芹沢さんはそれを口に含む。



(いややは芹沢はん。完璧に離桜ちゃんに魅入ってはる。)



先程から、舞から目を離さない芹沢。
その視線が離桜に向けられたものではないかと、明里は心配だった。



「変わるものだな。」


「・・・桜のことどすか?」


「桜・・・?あぁ、あの女のことか。」



芹沢のその反応・・・
魅入っているのは離桜ではないということか。

そのことにほっと胸を撫で下ろした。

しかし、次の発言で一気に不安感が胸を占めることになる。


「桜という女・・・いい女だな」


「・・・!!!」



ちらりと芹沢をうかがいみる。
やはり視線は舞を見たまま動かない。


「その女のことが心配か・・・?清嵐(しんら)」


「・・・!!」


なぜその名を知っている・・・!!


今度は芹沢が、やっと舞から視線を外して明里のほうをみた。


明里は自分の本当の名を知られていたことに酷く狼狽えた。