誠の道ーキミと共にー

「また儂にあの酷い舞を見せろと言っているのか?!」



芹沢さんは興奮したように声を荒げた。

頭を下げた女郎は、それにびくりと肩を揺らす。



「さっきのはほんに、すんません。

でも、つぎは、今から舞うのはきっと。・・・いんや、絶対に芹沢さんに喜んで戴ける舞を舞ってみせます・・・!!」



その力強い決意に、芹沢さんは浮かせた腰を戻した。



「・・・見せてみろ。お前の渾身の舞を。」



女郎はその言葉に、がばりと顔をあげた。



「・・・!!」



お礼の言葉もでないくらい嬉しかったのだろう。
それは言葉が詰まって出て来ないように
見えた。



「ほんに、おおきに・・・!!」


女郎は再度頭を下げた。


そして、後ろを振り返り私のもとまで歩いてきた。



「さっきは、ほんにおおきにな。

で、あんさんは何を弾けるん?」



「・・・先程の舞でしたら、合わせられるかと。」


「さっきのな。うちの十八番(おはこ)や。でも、あんさんが三味線弾くなら誰が歌うん?」


舞を舞うのは三味線と、それに合わせた語り口がいないと始まらない。


つまり、私一人で舞は踊れないと言うわけだ。


だがしかし。



「大丈夫です。私が二つともやります。」


女郎は驚きに目を見開いた。

が、すぐに微笑んだ。


「・・・いつでもええよ。」

女郎は一度深呼吸をすると、決意に満ちためで舞の構えを取った。