誠の道ーキミと共にー

ほかの女郎さんたちも顔を強ばらせていた。



このままじゃ、被害が拡大してしまう。



どうしよう、どうしようっ!


どうにかしなければ・・・





私は、立ち上がって、
先程まで使われていたであろう三味線がおいてあるところまで歩きはじめた。



「加賀美?」



沖田さんの声に振り返らず、まっすぐに
三味線のもとまで歩き手に取った。




そして、弦をシャン・・・と弾いた



撥(ばち)を持つ手が震えた。
でも、ぎゅっと撥をもつ手を握り締めた。


大丈夫だ。
甘ったれるな。



教わったじゃないか、


『璃桜、辛い時こそ
 音を奏でなさい。


 綺麗な、澄み切った音は人の心を落ち着ける』


そう言って、私の記憶のなかにいる母は歌った。

なんの歌だったか覚えてない。
その時以外にも沢山、母は歌ってくれたから。
そして、歌っている母は幸せそうだった。
聞いている私だって、素直にその声に聞き入った。


まぁ、それは母が災厄を祓う神だったからなのかもしれない。
もしかしたら、その母の声には何か力があったのかもしれないから。



昔の記憶を思い出してふと思った。


そうだ。

まるで透明な、澄み切った、綺麗な音を。




たしかに、私は教わったじゃないか。