その僕の言葉を聞くと、その男は僕に木刀を渡し、自分は道場の中心へ歩いた。


「じゃあ早くやろうぜ!」


「ふっ・・・解った。」


僕も、その男と向き合うように立ち、木刀を軽く構えた。


その瞬間。道場の空気が一変した。


男と僕の殺気がぶつかり合い、ピリピリとしたような空気を作り出していた。


「命が来ないなら俺からいくぜっ!」


威勢の良い掛け声と共に放たれた男の木刀を、命は緩やかな動作で受け止める。


「ほう・・・力はあるようだな。」


「馬鹿にすんなよっ!」


男は一瞬飛び退き、木刀を上段に構え、命のもとへ突進した。


が。


「甘い。」


男が木刀を振り下ろした時、もうそこには命の姿は無く、代わりに首筋に木刀が押し付けられていた。


その男の負けで、周りの空気はさらに重くなった。


だが。


「いやぁ~!やっぱり強いんだなお前!


俺は永倉新八。よろしく。」


そう言って笑った永倉に、一気に場の空気は緩まった。