「土方さん、もう降参したらどうですか?」
志乃神はまるでそれが甘美な物であるかのようにゆるりと笑い、俺に負けを認めろと進めてくる。
「別にこれは、長州との戦いではないんですから、降参しても貴方や貴方の大切な者が死ぬわけではありませんよ・・・。」
それは、悪魔の囁きか。
志乃神は俺の耳に口を寄せ、そう囁く。
そして、俺の体もまるでそうしろと言わんばかりに言うことを聞かなくなり、体中の力が抜けていく。
だけど。
「俺は・・・負ける訳にはいかねぇんだよっ!」
そして、志乃神を真っ直ぐに見据え。
「俺には、守るべき奴らが居るんだ。
たとえ、相手が敵じゃなかったとしても、俺は・・・!」
そう叫ぶと、木刀を握る腕に力を込め、志乃神を一気に押し返す。
「っ!」
志乃神は、倒れることも無く飛び退き、俺と距離を置いた。
その時。
