ガタガタ‥‥キィ―ッ‥



電車が目の前に停車する



持っていた小さなバッグを
ヒロさんに手渡した



「サンキュ‥」



そう言って一歩前へと
電車に近づくヒロさん


空いた扉から
数名が降りてきて
横から何人かが乗った



もちろんヒロさんも乗る



扉の前まで行くと
ヒロさんは立ち止まり
こっちに振り向いた



「頑張れよ、面接」



優しく笑ったその顔に
寂しさが込み上げていた



「うん頑張る。ヒロさんも
頑張ってね」



「おう。‥じゃあ行くわ」



大きな荷物を力いっぱいに
持ち上げて
扉の向こうに入っていく




あと数秒‥



あと数秒で



この扉は閉まる



その前に言わなきゃ


あたしが言いに来たこと


2つ目の目的を‥




「ヒロさん、あのね‥」


プルルルルルル‥‥‥



鳴り響く発車音に
あたしの言葉が消えた



でも言わなきゃ





‥扉が閉まった



ヒロさん‥あのね?



離れても
あたしはヒロさんだけを
想ってるからね


遠くに行っちゃうけど
"さよなら"じゃない



手を上げるヒロさん



"ばいばい"




その言葉が怖くて
ここまで来たんだよ




"ばいばい" じゃない



"またね"を言いに
ここまで来たんだ