一時間かけて
来た道を戻っていく


途中ヒロさんが口を開いた


「あのさ引っ越し
10月って言ったけど
早まりそうなんだ」


「え‥?いつ?」


「多分8月の終わり‥」


「8月の終わりって‥
あと1ヶ月しかないじゃん」


「うん‥」



車の中は一気に
ムードが下がる


もし引っ越しが早まったら
ヒロさんは一ヶ月後には
東京に行ってしまう



そんなの急すぎだよ‥

平常心なフリして
内心はすごく寂しいのに
ヒロさんとの時間が
どんどん短くなっていく



いやだよ―‥



「あかり? 俺な、
向こうで一人暮らしする。
婆ちゃん家に近いとこの
安いアパートだけどな。
だから気にせず
いつでも来いよ」


「一人暮らし?
‥分かった。毎日行く」


「いや毎日は遠慮する」


「嘘だよ‥行きたいけど
毎日毎日ヒロさんと
一緒にいたいけど‥
迷惑かけちゃ彼女として
失格だもん」



そう‥


本当は嫌でも付いて行くって
言いたいよ


だけど
ヒロさんが困るでしょ?


最後まで
良い女でいたいんだ


"俺の女"は永遠に
"良い女"でいたいんだよ



この気持ち



届いてる?



ヒロさん―‥