「もう、いいもん」


ぷいっと反転すると、足速に去って行った。何怒ってんだ、アイツ……。


「お~う、上田!帰ろうぜ!」


「おう、神野」


「どした?元気ないな」


「いや、別に……」


「あれ?まどかはまだか?なんちゃって」


「……」


「おい、俺を寂しい男にする気か。ツッコめよ」


「行こうぜ」


「お、おう……でも、まどかは?いいの?」


「いい」


俺たちは校舎を出ると、とりあえずゲームセンター方面へと歩き出した。


ったく、何だったんだよ、まどかのやつ。何でそんなに必死に誘ってくるんだよ。


別にいいだろ、俺なんかが一緒に居なくたって。


いいんだな、お前が誘わないなら、神野と二人でゲーセン行っちゃうぞ。




そのとき、俺の脳裏にまどかの言葉が過ぎった。




(観たい映画があるんだけどさ)




……言うな。言うなよ、俺。別に、そこまでしてやる必要ねぇだろうが。


何で俺が、まどかの恋のために頑張ってやんなきゃいけないんだよ。そうだ、言う必要なんてねぇよ。


「……おい、上田?どした、思い詰めた顔して。相談だったら乗るぞ?」


「お前さ、今日、まどかと約束あるんじゃないのか?」


何でこうなるんだよ。何で俺は、いつもこうなんだよ。


「いや、無いけど」


「嘘つくな。行って来いよ、映画。ゲーセンだったら、明日にでも行こうぜ」


「へ?何が?」


「だから、別に気ぃ遣わなくて良いって。まどかに、映画誘われてんだろ?」


「いや、誘われてねぇよ」


「……は?」