「神野、向こう行っても、頑張れよ」


「ああ、もちろん」


「良いよな~お前は、才能あって」


「まっ、才能だけじゃどうにもなんねぇよ。投資家の道は険しい」


「そうだな、投資家……って、え?!何、投資家って?」


「え?俺、投資家になるために海外行くんだけど。勉強の留学だ」


「は?!何だお前それ、唐突に。ラグビーはどうしたんだよ?!」


「んなもん、とっくに飽きた」


「飽きたって……。てゆうか、投資家って何? 政治家みたいな感じか?」


「頭の悪いお前に言っても理解不能だ」


「何だと、この野郎!」


「ハハハ、チビが怒っても全然怖くねぇよ」


「俺はチビじゃねぇよ、お前がデカイんだよ!」


「ハハハ。こうして言い合えるのも、残りわずかだな」


おいおい。あんまりしんみりするなよ、こっちまで落ちてくるじゃんか。


「じゃ、また学校でな」


一人きりになると、再びまどかが頭を過ぎった。それは忘れようにも、脳裏に焼きついていて。


何でだろ。何で俺は、こんなに好きなんだろ。


早く諦めたらどうなんだ。まどかには、神野って言う好きな相手がいるんだぞ。俺なんかが、太刀打ちできる相手じゃねぇだろ。


そんなこと、一年前から重々承知してるコトなのに。何で。


神野が海外に行って……居なくなったら、もしかしたらまどかの気持ちが変わるのかも……そんな最低なコトすら考えてしまう自分がつくづく嫌になる。


こんな俺じゃ、両想いになんてなれなくて当然だな。




モヤモヤとした帰路を、引きずるように歩いた。