ゲームセンターに着くと、俺はいつものようにレーシングゲームに腰を掛けた。対戦相手は、もちろん神野。


「ねぇ~上田、俺たまには負けたいんだけど」


「うるさいな、今日は負けさせてやるって言ってんだろ」


「そのセリフ、もう百回くらい聞いたよ」


チラッとまどかを伺うと、一人でUFOキャッチャーしていた。


どうやらクレーンが上手くぬいぐるみを掴んだらしく、興奮して「わ~!」とガラスに両手を強く当てた。


でもその衝撃で、クレーンの手からぬいぐるみが外れた。何やってんだ、アイツ……バカ過ぎるだろ。


「おっ、上田、今日調子良いじゃん。俺の前を走るなんて」


「ククク。お前の時代も終わりだ」


「なぁ、上田」


「何だよ、集中してんだから話掛けんな」


「まどかってさ、俺に対して、何か思ってんの?」


……えっ?!


「おわ~!嘘だろ!スリップした!」


「あ~コースアウト。せっかく俺の前走ってたのに」


「お前が動揺させるからだろ!」


「動揺? 何で?」


……しまった。


「いっ、いや、動揺なんてしてないよ!てゆうか何でだよ、突然?」


「いや、何かさ、やたら遊びに行こうって誘ってくるんだよ」


「そんなの、いつものコトだろうが」


「いや、それがさ、俺と二人で行きたいって」


ズキッ……。


「さあ、俺は別にアイツから何も聞いてないけど……」


「そっか。まあ何でも良いけど」


スピーカーから、『ゴール!』と音声が聞こえてくる。もちろん、神野が一着。


「……神野」


「何だ、もう一回は無しだぞ」


「……もしもアイツが、お前に対して特別な想いを持ってるとしたら……お前、どうすんだよ?」


「え?そうだな……わかんねぇよ」


何だよ、その困ったような顔は。そんなに困ってるんなら、まどかの気持ち、俺に譲ってくれよ。


……って、何考えてんだ、俺は。人から幸せを奪おうなんて。