「いや、別に」


「……おい、急に寝るな、目開けろ」


「開いてるよ、細いだけだよ!」


「え、それ開いてんの?」


「……ぶん殴るよ?」


「どうぞ」


く~ムカつく!はいはい、敵いませんよ、華奢な俺がゴツイあんたになんて!オマケに頭も良いし、イケメンだし、器用だし……何で人間って平等に出来てねぇんだよ。


「神野君~!上田君!一緒に帰ろ~!」


お、まどかの声……って、アレ?!


「まどか……お前、髪……」


「お、さすが上田君、すぐ気づくとは!」


「いや、誰だって気づくだろ、それ」


「ばっさりショートにしてみた!似合う?」


「急にどした、ついに失恋した?」


「ウフフ~」


「……おい、笑顔で蹴るな!足!」


やべ~可愛い!びっくりした……。


「お前ら、ホント仲良いな~」


「神野!茶化すな!良くないわ!」


「じゃ、帰りますか」


神野のその言葉で、三人は校舎を出ていつものゲームセンターへと足を運……んだのはいいんだが。


「……おい、まどか」


「何?」


「何じゃねぇよ、何で俺の隣を歩くんだよ?」


「別にいいじゃん、どこでも」


「見ろ、せっかく神野が一人で離れて歩いてんじゃねぇか。チャンスだぞ、行けよ、俺離れて歩いてやっから」


「いいよ」


「いいって何だよお前」


「だって~恥ずかしいんだもん。髪、変じゃない?」


「んなコト言ってる場合じゃないだろ、あと二ヶ月だぞ!神野、アメリカ行っちゃうんだぞ!」


「えぇ~……」


「ほら、行け!」


俺が背中を押すと、しぶしぶ神野のところに歩いて行った。


俺はすぐに携帯電話を取り出すと、特に用事も無いのにせわしく文字を打った。


こうするコトで、神野が俺に話題を振ることも無い。俺なりの気遣いだ。


あーあ。気持ちとは裏腹に、なぜか全力でサポートしてしまう。これは、自分の一番嫌いな部分だ。


何で俺は、正直になれないんだろう。嬉しかっただろ、隣歩いてくれて。もっと話したかっただろ。俺だって、まどかとはあと二ヶ月でお別れなんだぞ。


……楽しそうに話してるな。何話してるんだろ。


まどかは幸せそうなとき、俯いて唇だけ微笑むような顔をする。神野だけに見せる表情だ。


俺はそのまどかを、遠くから見るのが好きだった。


俺へ向けてくれなんて、贅沢は言わない。だからせめて、こうして見ていたかった。