2012年、1月。
お正月ムードもすっかり抜けて、今日から新学期が始まった。
まあ新学期って言っても、俺たちはもう高校三年生なわけで。
あと二ヶ月もすれば、それぞれ別の道を歩み始めるわけだ。
俺は地元の大学へ、まどかは中小企業の事務職。
そして神野は、ラグビー推薦で、なんと渡米するそうだ。
初めて聞いたときはびっくりしたけど……まあ留学ならずっと向こうに居るわけじゃないだろうし、別に二度と会えないってわけでもない。
不思議なもんだな……高校三年間共に過ごしてきた仲間が、もうすぐ全然違う世界を歩いて行く……。
まあ新生活ってのも楽しみと言えば楽しみだけど、やっぱ仲間との別れは淋しいな。
もう二度と会えなくなるってわけじゃないけど、一緒に居る時間は今よりずっと少なくなると思うし。
始業式が終わると、俺はカバンを手に取って教室を後にした。
あれから……あの一件から、もうすぐ一年も経とうとしている。
もちろん、アレを聞いちゃった以上、俺の気持ちはまどかに伝えていない。伝えるつもりもない。
でも……好きって気持ちは消えるわけもなく、逆に一緒に過ごすことで、それはどんどん膨れ上がって苦しくなっていった。
あと、二ヶ月で三人はバラバラ……まどかは、どうするつもりだろ。神野に、好きって伝えるのかな?
応援したい気持ちもあるけど……やっぱり、本音を言うと嫌だな。そのときは、できれば俺はその場に居たくない。
「お~い!どうした、ボーッとして。正月ボケか?」
「ああ、神野か……」
「……どした?新年早々暗い顔して。何かあった?」
相変わらずさわやかフェイスだな、コイツは。