最終コーナー、直線。どう足掻いたって、俺の車よりスピードの出ない神野の車では、後ろに居る以上、もう勝てない。


この勝負、もらった。


「お~う。さすが~、スピードでは全然勝てねぇや」


「神野、約束はちゃんと守れよ」


「お前がな」


神野の車は突然コースアウトすると、壁に激突した。


「お前、何やってん―」


文字通り、絶句した。神野の車はいつの間にかワープして、俺の前を走っている。


えっ、何が起きたの?!


「ほい、裏技。ゴ~ル、俺の勝ち」


「は?!汚いぞ、裏技なんて!」


「アホか。勝負の世界に、汚いもクソもあるか。勝ちゃいいんだよ、勝ちゃ」


「何でこんな裏技知ってんだ!」


「この前一人でやってるとき、発見した。いや~これめっちゃ難しいんだよ?一ミリずれちゃうとできなくて」


「何でだよ!お前、今の今まで、そんな裏技使わなかっただろ!」


「だってお前相手じゃ、使う必要ねぇんだもん」


「あ……」


「ま、何はともあれ、約束は約束だ。言ってもらおうか?」


「いっ、今のは―」


「無し、か?お前、言ったよな。約束は守れ、と。自分は良くて、俺はダメか?俺は確かに勝ったぞ?裏技無しなんていう取り決めでもやったか?」


「いや……」


「言え」


……真っ直ぐ見やがって。まあでも、約束したのは確かだからな。


知らないぞ、どうなっても。


「実は……」


何か、ムダに緊張するな。ちょっと恥ずかしいし。


「俺、まどかのコトが好きなんだ」