レースが始まった。


スタートダッシュの遅い神野の車は、俺の遥か後方を走った。


こんな、たかがゲームくらいで、やたらと緊張が走る。




俺の頼みは、たった一つ。




神野に、まどかの告白を受け入れてもらうコト。


最後の最後で、何てバカげた頼みだって、思うかもしれない。でも、俺の中では、全てが繋がっていた。


さっき……まどかが居ないときに見せた、神野の困惑した表情。それは、神野がまどかを好きってコトだ。


それなのに、俺が「もしもまどかが特別な想いを持ってるとしたら?」って問いに対しては「わかんねぇ」って言った。


つまり、神野は悩んでる。自分が海外に行ってしまうから、想像を絶する遠距離になる。それでも付き合って、お互いが幸せになれるのかどうか。


両想いが結ばれたところで、遠距離になって大丈夫なのか。そう考えてるはず。




レースは中盤に差し掛かった。さすがに車の性能の差か、俺はスタートと変わらず神野の前をキープしている。




……でもな、神野。お前は、考え過ぎだ。優しすぎるんだよ。


いいじゃんか、好きな人同士が結ばれれば。今後のコトは、それからじゃんか。


そりゃ辛いコトや苦しいコト、寂しいコトの方が多いかもしんないけどさ。


でも、好きな人と付き合えるって、そんなもの吹き飛ぶくらい、相当幸せなコトだと思うぞ。