「それは、お前が負けてからのお楽しみ」


「ふ~ん。良いよ」


「えっ、あっさりOK?」


「そのかわり。俺が勝ったら、どうすんだ?」


「え?」


「何、とぼけた面してやがんだ。当たり前だろ、俺が負けたら一つ頼まれる。だったら俺が勝ったら、何かしてもらわねぇとなあ」


「汚いぞ、俺の方がずっと確率低いだろ」


「だったら、お前の頼みも無しだな」


「くっ……じゃ、ジュース一本」


「その程度?お前の頼みと比例するのはジュース一本程度なのか?」


「じゃ、じゃあ、最新ゲームソフト!」


「甘いねぇ、物じゃダメだ」


「じゃあ、どうすりゃ良いんだよ?」


「聞かせろ」


「何が?」


「親友だからこそ言えないコトを、だ」


「えっ……」


「言ってたろ、お前。この間」


「それは……」


「お前の頼みってのも、おそらく物じゃないんだろ?」


「まあ……」


「いいじゃねぇか。最後くらい言ったって。俺はもう、海外行っちゃうわけだし」


「う~ん……」


「大丈夫、勝てば問題ねぇだろ、勝てば。男なら最後くらいバシっと勝て」


「……わかった。じゃあ、勝負だ」


「そうこなくちゃ」


二人分のプレイ料金を投入すると、スタートボタンを押した。


「ハンデだ」


ハンドルを回すと、神野は一番遅いレーシングカーを選択した。


「これで負けるようなら、お前の頼みはその程度だったってこった」


「わかってる」


俺はいつもの手馴れたレーシングカーを選択する。


「ただし、手加減はしないぞ。じゃ、スタートだ」