「何だよ、俺まだ今日一回もまどかに会ってねぇのに……サヨナラも言えずに、お別れかよ」


神野は、まどかの気持ちに薄々気づいてる。


コイツは、元々自分から告白するって感じのヤツじゃないからな……もしも付き合いたいと思ってるんだとしたら、まどかの告白を待ってるはず。


それなのに、今この場に、まどかの姿が無い。告白を諦められたと予想して、焦ってるのか?


「ま、良いや。どうする、上田?今日卒業式だし、ゲーセンやめてどっか行く?」


「どっかって、どこだよ?」


「ん~……」


「行くとこないし、いいんじゃねぇか、最後もいつも通りで」


「……それもそうだな」


一体、何を考えてるんだ、神野。


お前は、もしもまどかに告白されたら、受け入れるつもりだったのか?


それ以外、さっきの表情の説明がつかねぇよ。




ゲームセンターに着くと、普段と同じようにレーシングゲームへ腰を掛けた。


「さ~て。結局、一度も負けなかったな、俺」


「バーカ、まだこれから最後の勝負があるだろうが」


「無理無理、そんな最後の最後で勝てるわけねぇ」


「やってみなくちゃわかんないだろ」


「お前ね。ここで勝てるのは、ドラマの世界だけだぞ」


「……じゃ、もうちょっとドラマチックにしてみようか」


「え?」


「神野。もしも俺がレースに勝ったら、一つ頼みたいコトがあるんだけど」


「何?」