途方に暮れながら、自宅付近の公園に差し掛かったときだった。


ブランコに、女の子が一人乗っているのに気づいた。


まどかだった。何でこんなトコにいるんだ?


「……お前、何やってんの?」


「あ~上田君!暇だから、ブランコで遊んでた」


「遊んでたって……漕ぎもしないで、ただ座ってただけじゃん」


「……」


何で、沈黙なんだよ。何か言えよ。


俺はまどかの隣のブランコに腰を掛けると、ゆっくりと漕ぎ始めた。


おぉ~、久しぶりだな、ブランコなんて。心なしか、ちょっと怖いゾ。意外とスピーディーじゃん。


「……上田君てさ、好きな人とか、居ないの?」


うおっ!焦った……落ちるかと思った。


「な、何だよ、急に?!」


「いや、いないのかなぁと思って」


「い、いないよ、別に」


「ふーん。誰?」


「だから、いないって言っただろ」


「あのね~女の子は、そういうの鋭いんだよ?」


「な、何がー?」


「アハハ~ちょっと上田君、白々し過ぎる~」


「う、うるさいな、ほっとけよ!それより、お前はどうすんだよ!」


「何が?」


「何がじゃないよ、神野だよ!」


「うーん、そうだね……」


うわー、聞くんじゃなかった。告白するって言ってもショックだし、かと言って……。


「私は、諦めようかなって思う」


「何でだよ?お前、それで良いのか?」


「でも……」


「諦めんなよ、一年以上思い続けてきたんだろ?もう、アメリカ行くんだぞ?ラストチャンスだぞ?気持ち伝えるだけ、伝えてみろよ」


ほら……こうなる。何が諦めんなよ、だ。自分のコト棚に上げて。


「うーん……」


やめろ。やめてくれ!


「そうだね。じゃあ、言うだけ言ってみよっかな」


「その意気だ。告白なんて、タダなんだからさ。別にフラれたって、もうガキじゃないんだから、恥ずかしくもなんともないよ」


「うん、頑張る!」


「じゃ、暗くなってきたから、お前も早く帰れよ。じゃあな」


「うん、またね」


俺はまどかに背を向けると、そそくさとその場を跡にした。




……なんで、こうなるんだ。




何が告白はタダなんだから、だ。だったら俺だって、告白すればいいだろうが。


何やってんだ、俺は。好きな人の恋を精一杯応援なんかしちゃって。世界一のバカ野郎だよ。


「待って、上田君!」


そのまどかの声に、何かわからないけど、過度の期待をしてしまう。


もしかして……ホントは俺のコトが好きだった、とか?


映画には、俺と二人で行きたかったのか?


公園に居たのは、俺の帰りを待ってたのか?


踵を返す足が、緊張で少しだけ震える。


「え?何?」