それは、別に何の変哲も無い、ごく普通の平日だった。


いつものように下校した俺たち三人は、いつものように近所の古びたゲームセンターに繰り出していた。


「おい神野、レーシングゲーム勝負しようぜ」


「またかよ。相変わらず懲りないねぇ」


「うるさいな。今日こそお前に勝つからな!」


神野と俺は隣接したリクライニングに座って百円硬貨を投入口へ入れると、スタートボタンを押した。


その後ろでレースを楽しそうに見守る、まどか。


「頑張れ~、神野君!」


「……ちょっとまどか、何で神野の応援するの」


「じゃあ、上田君もとりあえず頑張れ~」


「何、その適当な感じ」


「おいおい上田、よそ見なんかして随分余裕だな。レース始まってんぞ」


「なっ……?!おい、汚いぞ!」


「はい、ゴール。俺の勝ち~」


「いっ、今のは無し!もう一回だ!」


「しつけぇな、お前は。まどか、代走頼んだ」


「えっ、わ、私?!神野君は?」


「トイレ行ってくる」


神野が席を立つと、まどかが座った。ほのかに女の子の甘い香りが漂う。