走り去る楓の顔はまさに前進を示す生き生きとした表情だった。

さっきまで幸君の事でうな垂れてたのに。



恋多き女の子は忙しいなーなんてぼやきながら、日野君に貰った高級メロンパンの封を開けた。

空けた瞬間広がる甘い香り。

砂糖でコーティングされたサクサクの生地。



「日野君いただきます」


「どうぞ召し上がれ」



一生口にすることはないと思っていたパリスの高級メロンパン。

見た目もお上品な感じで可愛らしい。



ほくほくとメロンパンを眺めかぶり付くあたしをニタニタしながら眺める日野君。




そんなあたし達に決まって飛んでくる毒ある言葉。




「暑苦しいから他所でやってくんない」




糸のように細細かいサラサラな黒髪をなびかせて、嫌悪感たっぷりの表情と言葉を容赦なくあたし達に放つ。


ワザとらしくタメ息を吐いて隣の席に腰を下ろした。