とくん…

とくん…

規則正しく鳴る結城くんの心音。

すごく落ち着く…。


「頭領、詩織さん、こっちです」


「あぁ。行くよ、詩織」


「うん」


もう少しこうしていたいような気がするけど、そうもいかない。

結城くんに手を引かれながら、いつの間にかある小さなドアを

四つん這いになってくぐると、真っ暗な人1人分の通路があった。

なんか、通気孔みたい。

よく泥棒とかが通るような。

そんなのんきなことを考えながら進んでいると。


ボフッ


「痛っ!」


いきなり何か固いようなやわらかいものが鼻に当たった。


「おっと…ごめん、大丈夫かい?」


「…うん……大丈夫」


あんまり大丈夫じゃないけど…。

鼻をおさえながら声のする方を見ると、天井(?)から小さな灯りが漏れていて

まだ薄暗いけど、おかげで周りを見ることができた。


どうやら私の低い鼻に当たったのは、結城くんの引き締まった脇腹だったようで。

うっすら見えるその表情からは、苦笑しつつも面白がっているのがうかがえた。

全く…こっちは痛かったのに!

私は一度大きなため息をつくと、キョロキョロと辺りを見回しながら

一番気になっていたことを口に出してみた。


「ここは…?」


「トランクの下、だよ」


「へ?」


トランクの、下?

そんなのあり?

首を傾げて結城くんを見る私は、今確実にぽかんとした顔をしているだろう。

だって普通に考えてトランクの下なんて…

…人1人分入るスペースがつくれるものなの?

結城くんはそんなぽかん顔の私を見て、くすくすと笑った。


「まぁ、不思議に思うのも無理ない。
普通トランクの下、なんて存在しないからね」