「ちょっ…頭領っ?!」


呼び止める章の声を背に、オレは迷わず彼女の元へ走った。


「詩織っ!」


「わっ……」


手をグッと引き寄せて、バランスを崩した詩織を強く抱きしめる。


「3ヶ月も…どこに行ってたんだよ?」


「えっ…ちょっと」

「学校にも来ないし、随分探したぜ?」

なるべく優しい声で耳元に囁く。


やっと見つけた


無事で、よかった…


「あっあの…ちょっと待って」


「………詩織?」


いつもと違う反応の詩織の顔をのぞきこむ。

オレの顔をじっと見つめて、動かない。

不思議に思ったが、今は会えたことに嬉しい気持ちが勝っていて、


顔を近付けると、そっと唇を重ねた。



パンッ!


一瞬何がおきたのか分からなかった。


乾いた音と共に、頬にはしる衝撃。

ジンジンと痛む頬が、オレを現実へと引き戻す。


「なっ何するのっ!」


「は……?」


「こんなことしてきて、あなた一体誰なんですかっ!」


誰…だと?


背筋が凍って、顔がひきつる。


「詩織?お前、何言ってるか解って……」


そこまで言って、オレは首をふった。

冷静になって考えてみる。

記憶が、ないのか…?


せっかく会えたのに

こんなのって…

……ありかよ



「だからどうして、私の名前を知ってるの?」


その言葉は、オレの胸に深く突き刺さった。


オレは今、どんな顔をしているのだろう

きっと、すごく情けない顔をしているのだろう

くそっ……