きれいに晴れた青空に、少し肌寒い風。

まさにもう秋ですって感じな日。

こんな日は、ゆっくり紅葉でも楽しむといいんだろうけど。

私は今、車の中で憂鬱な時間を過ごしていた。


「ねぇ、結城くん。ホントに行くの?」


何となく目を合わせづらくて、下を向いたまま尋ねると。



「ああ、もちろん。行ってちゃんと話をつけなくちゃならないからね」


少し不安な、控えめな私とは対称的に。

口の両端を上げて、きれいに微笑む結城くん。

そんな彼の笑顔に小さくため息をつきながら、車窓に視線をうつす。


踏切を渡って、交差点を右折して。

しばらくすると、嫌な思い出のある小さな公園が見える。

この公園を通りすぎたってことは。

…叔母さんの家まであと10分くらい。


できることならもう来たくなかった。

でも結城くんが、

「お前の叔母さんたちに言わなきゃならないことがあるんだ。
…明日中に、ね」

って真剣な顔をして言ってきたから。

私は頷くことしかできなかった。


でも…今日中に話さなきゃいけないことってなんだろう。

今まで、この車の中で数えきれないほど聞いたけど。

何回聞いてもはぐらかされちゃうし…。


昨日の夜中、章さんと結城くんが真剣な表情(カオ)で何か話してたのは知ってる。

二人とも、整った顔を難しそうに歪めて腕組んでた。


私のことなのに、私が知らないって…。

駄目だと思うんだけどな……。


そう考えながら、彼の綺麗な横顔をじっとみつめていると。

そんな私に気づいたようで、

こちらにゆっくりと振り向くと、優しく微笑んだ。


「…どうしたんだい?そんなにオレの顔をみつめてさ」


私が不安な時にいつも向けてくれる、結城くんの優しい優しい笑顔。

なぜかすごく安心できる。

私は静かに首を振ると、少し微笑みながら言った。


「なんでもないよ」


「……そっか」


……叔母さんの家まであともう少し。