「…………」


どうも気まずい沈黙が続く。

もうそろそろ日が暮れるな…


今日は雲ひとつない青空だった、

きっと、夕日が綺麗だろう。


詩織は、ここから見える夕日が好きだったな…。


「あの…」


先に沈黙を破ったのは章だった。


「夕日を…見に行きませんか?」


「夕日…か」


それは、気分転換に行こうという意味なのだろう。


幼なじみとはいえ、部下に気を遣わせるなんて…


「…頭領の名が泣くね」


ぼそりと呟いた言葉は聞こえなかったのか

聞かなかったことにしているのか


章はドアを開けて、横に控えた。


「参りましょう」


「ああ」


オレたちは、部屋をあとにして、商店街の向こうにある、

展望台へ向かった。

商店街は買い物客で、ガヤガヤと賑わっている。

人混みに入るとつい、あいつの面影を探してしまう。


桜色の髪の女なんて、そうそういない。

見かければすぐ分かるはず



ふと、目の端にピンク色のサラサラしたものが映った。


「あれは……っ」


前方にあるスーパーに目をやると

自動ドアの前に、よく知る少女の姿があった。


夜明けの色をした瞳

淡い桜色の髪


透き通るように白い肌


あの、懐かしい横顔


間違いない


「詩織………?」


彼女は少し驚いたような顔で、こちらに振り向いた。


ずっと、探してた




……愛しい人……


考えるより先に、体が動いていた。