叔父さんだったら蹴っ飛ばしてやる!


そう心に固く誓って、足音のする方を睨み付ける。



けどその決意も虚しく、来たのは知らない男だった。


「目が覚めたようだな。気分はどうだ?」


「白々しい…よくも言ったものね。いいわけないでしょ?!」


私は男を真っ向から睨み付けて、冷たく言い放つ。

そしてプイッと横を向く。


男はそんな私の態度を見て、小馬鹿にしたように笑った。


「本当に威勢がいいな。けどな、もう少し考えてものを言うんだな」


「……どういう意味?……」


「ふ…俺に協力すれば助けてやらないこともないと言うことだ」


その言葉に、私の心臓はドキリと跳ね上がった。


……出られるかもしれない。

こんな所から逃げられるかもしれない。


この2つの言葉がぐるぐると回って、頭を支配していく。


気がついた時には、もう口が勝手に開いて、言葉を紡いでいた。


「…何をすればいいの?」


そう問えば男はニヤリと笑った。


「簡単なことだ」


「世界一を誇る水軍の頭領……兎街結城の始末」


「え……?」


一瞬意味が分からなかった。

兎街結城……?


それって結城くんのことだよね?


……始末。


……殺せってこと……?


私はぎゅっと拳を握って、相手を睨み付ける。


「私に…人殺しをしろって言うの?」


「人聞きが悪いな。ただいなくなってもらうだけだ」


平然と笑みを浮かべながら言う男に、私は思わず声を荒らげた。


「ふざけないでよ!!人の命をなんだと……」
「お前は今までも、子供たちに同じようなことをしてきたじゃないか」


「っっ!!」


「だろ?」


「………っ」


私の言葉を遮って言う男に、何も言い返せなかった。


確かに

私に売られて、誰かに買われていった子供たちは

死ぬまでコキ使われるか、何か危ないことの実験に使われるか。


…どっちにしろ、生きられる望みはないに等しいから……。



私が俯いて、唇を噛み締めていると

男はくつくつと笑った。