キオクノカケラ

「金は必ず返す。その娘も渡す。だから、あと3ヶ月待ってくれ!」


叔父さんは男に話しているようで、頭を下げている。


その娘も渡す…?

その娘って…………


私?!!



冗談じゃない!

私は叔父さんを思いっきり睨み付けると、叔父さんは冷ややかに吐き捨てた。


「こっちだって生活が苦しいんだ!!それなのにお前を3ヶ月も預かってやったんだ。」


「恩返しくらいしてくれよ」


何言ってんのよ!

私を散々コキ使ったくせに!!

何が恩返しよ!!!


「ふん……手数料として貰っておこう」


何が手数料よ!

人を何だと思ってるワケ?!



暴れてはみせるものの……

空手も柔道もやったことのない女子高生が、

大人の力に敵うわけもなく、逃げ出すのは不可能だった。


「ちっ…随分勝ち気なお嬢様だな」










“へぇ…随分勝ち気なお嬢様だね。”

“オレはあんたみたいなお嬢様、好きだぜ?”










「…………」


どうして結城くんの顔が浮かんだのか分からないけど、

前にもこんなことを言われたような気がした。


って考えてる場合じゃない!

逃げなくちゃ!!


早く逃げな………


「んっ!!!」


いきなり鼻にツンとするような匂いがしたと思ったら、

頭がくらくらしてきた。


その内、体の力が抜けてきて、視界がぼやけてくる。


何か薬を嗅がされてるんだ。

そう気付いた時には目の前が真っ暗になっていて、私は意識を手放した。



意識を失う前に、嬉しそうに笑う叔父さんと叔母さん、そして夏希さんの顔が見えて

外からサイレンの音が聞こえた。